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第210話

「よしよし」

小百合は一瞬にして心が柔らかくなり、弥生を何度も慰めた。

「もうそんなこと言わないから、泣かないで、いい?」

小百合はずっと弥生をなぐさめて、元気づけてあげていた。最後に弥生はまた明日の朝に来ると約束して、満足そうに部屋に戻った。

小百合は彼女の頭を軽く叩いた。

「はい、おやすみなさい、早く寝てね」

彼女が離れた後、小百合は瑛介に目を向けた。

「あなたたちは最近よくけんかをしているの?」

それを聞いて、瑛介は微かに鈍った表情を見せて、説明した。「弥生が冗談を言っているんだ、心配しないで」

「本当に私があなたたちの問題が見えないと思っているの?」

瑛介は表情を変えずに答えた。「問題って何?」

「ふん」小百合は冷たく鼻を鳴らした。「よく知っているじゃない」

.......

「奈々のため?」

突然そう聞かれて、瑛介の顔色が変わった。

「奈々はあなたの命を救ったから、あなたにとっては特別な存在だ」瑛介が唇を動かそうとしていて、まるで否定しようとしているようだ。小百合はまた言った。「否定しないで、ばあさんはちゃんと知ってるから。前は、弥生とうまくやっていたじゃない?最近問題が頻発しているのは、理由があるに違いない。あの日奈々に会うまでは、ただのけんかだと思っていたが」

小百合は意図的にしばらく止まってから言った。「リハビリテーション施設から帰ったその夜、奈々は訪れたのでしょう?」

瑛介:「.......」

宮崎家に嫁ぐ女性は、どれも簡単には欺けない。

孫が沈黙しているのを見て、小百合はため息をついた。

「私の推測したとおりだね。つまり、あなたの命を救ったから、あなたと一緒にいることになると思っているの?あまりにも虫のいいことを考えるじゃないか」

瑛介は眉を顰めて、無意識に奈々を弁護しようと口を開いた。

「いいえ、虫のいいことを考えてるんじゃない」

それを聞いて、小百合はもともと落ち着いたが、今は顔色を変え、言葉づかいも厳しくなった。

「彼女がそうじゃないなら、あなたがそうなのか?」

瑛介:「.......」

「今自分の立場を知っているか?あなたは既婚者だ。他の女と関係が曖昧で、弥生の気持ち考えたことある?」

瑛介は唇を一直線に押しつぶし、何も言わなかった。
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